top of page

触られるだけで、子どもの待つ行動は促進される!?

  • 椎木泰華(Yasuka Shiinoki)
  • 2016年5月13日
  • 読了時間: 3分

社会で生活していく中で、他者とのコミュニケーションは必要不可欠です。人付き合いが苦手な人、消極的な人でも、人生の中で、他者と関わったことがない人はいないでしょう。このコミュニケーション方法の1つとして、“ボディタッチ(=身体接触)”があります。異性の気を引くための手段として紹介されることもあるようですが、この身体接触の効果は他にもたくさんあります。

そこで今回は、未就学児の“待つ”行動に対する、身体接触の効果を検討した実験についてご紹介します。

■どんな実験?

この実験はアメリカ合衆国の大学の子ども発達研究所で、未就学児40名に対して行われた研究です。この未就学児は、“接触あり群”と“接触なし群”の2つのグループに均等に分けられました。

実験の部屋の中に、子ども1名と実験者1名が机を挟んで座ります。机の上にはカップが3つあります。実験者は子どもの目の前で、キャンディ1つを、3つのカップのいずれかに隠します。そして子どもに、「実験者が許可を出すまで、キャンディを探したり食べたりしてはいけないこと」、「実験者は別の用事で部屋を少しの間出ないといけないこと」を伝えます。また、ベルを渡し、「このベルを鳴らしたら実験者が戻ってくること」を伝えます。これらを子どもに伝えるとき、群によって次のような接し方をします。

接触あり群:子どもの背中を触りながら伝える 接触なし群:子どもの背中を触らずに伝える

2つの群の違いはたったこれだけです。

子どもの待ち時間を測定するために、実験者が部屋を出ている時間をタイマーで測ります。なお、ベルが鳴って、実験者が子どもに呼ばれた時はタイマーを止めます。この呼ばれた時には、指示内容と再び待つことができるかを確認します。最大10分間、実験者は部屋を出て、許可を出しません。しかし、それまでに子どもが許可を要求したら、許可を出します。許可を出した段階でこの実験は終了です。

以上の手続きで、“触る”・“触らない”の違いにより、待ち時間に差が出るのかを検討することが目的です。

■結果は?

Fig.1では、4歳児と5歳児にデータを分けた時の、各年齢の待ち時間(秒)を表しています。このFig.1からもわかるように、接触あり群は接触なし群より平均して2分程より長く待つことができました。このことより、背中を触りながら指示をすると、子どもの待つ行動が促進されることがわかりました。 この結果は、身体接触が子どものより良い行動を促進する可能性を示唆しています。

Fig.1 年齢別の待ち時間の群間比較(出典より引用)

以上の通り、今回は未就学児の待つ行動に対する身体接触の効果を取り上げました。今後、子どもと関わることがある際、この身体接触の話を思い出してみてください。また、他にも身体接触の効果として、ストレスの低減(Coan, Schaefer, & Davidson, 2006; Holt-Lunstad, Birmingham, & Light, 2008)や愛着の増加(Weiss, Wilson, Hertenstein, & Campos, 2000)など、さまざまな結果が今までの研究で示されています。

背中をさすったり、ハグしたり、ハイタッチしたり・・・私たちは普段さまざまな身体接触をコミュニケーションの中で使っています。ただ、それらの科学的効果を気にして用いていることはないかと思います。その科学的効果を調べてみるのも面白そうですね。効果的な身体接触を用いることで、相手にも自分自身にも何かしらのメリットがあるかもしれません。これからは今までよりも意識して、ボディタッチを行ってみてください。

引用文献

Leonard, J. A., Berkowitz, T., & Shusterman, A. (2014). The effect of friendly touch on delay-of-gratification in preschool children. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 67(11), 2123-2133.

(椎木泰華;米山直樹ゼミM1)


 
 
 

Comments


Copyright 2016 Department of Psychological Science, Kwansei Gakuin University

bottom of page