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美人の前では正直になる?

  • 西村友佳(Yuka Nishimura)
  • 2016年5月13日
  • 読了時間: 4分

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美人ステレオタイプ

初対面の女性がとても綺麗な人だったとき、あなたはその人に対してどのような印象を持つでしょうか?「綺麗な人だなぁ」「スラリとしていてモデルさんみたいだなぁ」「優しそうだなぁ」「礼儀正しそうだなぁ」……などなど、いろいろなことを感じることと思います。しかし、この4つの印象の中で、「優しそうだなぁ」と「礼儀正しそうだなぁ」は実際には外見だけではわからないことです。それでも私たちは日常生活の中で美人に出会ったとき、今挙げた例のような「この人はきっといい人に違いない」といった印象を抱いてしまいがちです。このように、相手の内面的な特徴の判断がその人の外見的な美しさに影響されてしまうことは「美人ステレオタイプ(”what is beautiful is good” stereotype)」と呼ばれています。しかし、2015年にWangらによって「美人であることが他者の道徳的な行動を引き出している」といった内容の研究が発表されました。今回はこのWangらの研究を紹介したいと思います。

Wangら(2015)の実験

実験は中国広州において実施され、18歳から25歳の男性81名が参加しました。実験に参加してくれたお礼として、全員に必ず5ドル、そして成績によって追加報酬が支払われることになっていました。追加報酬の額は8ドルと10ドルの2種類あり(表1.参照)、全試行数の半分が8ドル条件、半分が10ドル条件でした。

表1. 実験の条件とそれぞれの条件に割り当てられた参加者の人数

図1. この実験での1試行の流れ

[endif]--参加者には「この実験の目的は自分に関係する金銭のことだと、超能力的な予知ができることを確かめることです」という風に予め伝えられていました。また、このカバーストーリーを信じ込ませるために、参加者には超能力を信じるかどうかを調べる質問紙に回答してもらいました。

図1.は実験の流れを示しています。はじめに、画面に注視点が提示された後、女性の顔写真が現れました。この女性は実験の結果を記録する責任者で、別室で結果を見ているという設定で提示されていました。この記録責任者の女性の顔の魅力度は3条件用意されました(表1.参照)。女性の顔は1つの試行が終わるまで画面の左上に提示され続けました。

次に、画面上にこれから始まる試行の報酬額が提示された後、コイントスが表示されました。このとき、参加者はコインの表が出たか裏が出たかを予測しました。その際、参加者は表を予測したのか、裏を予測したのかを報告する必要がありません。そして、コイントスの結果が表示されたときに、自分の予測とその結果が合っていたかどうかを報告しました。自分の予測は報告しなくてもいいので、参加者は自分の予測が合っていたかどうかを正直に答えることもできるし、嘘の報告をすることもできるわけです。

それでは、実験の結果を見てみましょう。図2.を見てください。

図2. 各条件における予測と結果が合っていたと報告された確率

[endif]--追加報酬の額が10ドルのときで、提示されていた女性の顔の魅力度が高いときの【予測と結果が合っていたと報告された確率】はチャンスレベル(確率0.5)と差がありませんでした。そして、追加報酬の額が10ドルで、提示されていた女性の顔の魅力度が中程度のときと低いときの【予測と結果が合っていたと報告された確率】は提示されていた女性の顔の魅力度が高いときの【予測と結果が合っていたと報告された確率】よりも高くなりました。

Wangらの研究から、美人は男性の道徳的な行動を引き出している可能性が明らかになりました。では、魅力的な顔はどのようにして人の道徳的な行動を引き出すのでしょうか。Wangらは「感情プライミング」によって説明しています。

感情プライミングとは、先に引き起こされた何らかの感情が次の行動に影響することです。例えば、Chow, Tiedens, and Govan(2008)の研究では、ゲームを通じて怒りを喚起させたとき、実験参加者に反社会的な行動が見られたという結果が得られています。

この実験では、美しい顔によってポジティブな感情が引き起こされ、そのポジティブな感情が道徳的な行動を引き出した可能性が考えられるのではないでしょうか。もちろん、このWangらの研究結果だけで結論づけることはできませんが、男性に正直な行動や回答をして欲しいときに、綺麗な女性と対面させることはもしかすると何かしらの効果があるのかもしれません。

引用文献

Chow, R. M., Tiedens, L. Z., and Govan, C. L. (2008). Excluded emotions: The role of anger in antisocial responses to ostracism. Journal of Experimental Social Psychology, 44, 896-903.

Wang, J., Xia, T., Xu, L., Ru, T., Mo, C., Wang, T., and Mo, L. (2015). What is beautiful brings out what is good in you: The effect of facial attractiveness on individuals’ honesty. International Journal of Psychology, 10.1-8.

(西村友佳;小川洋和ゼミM1)

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