ギャップのある声と顔
- 光藤優花(Yuka Mitsufuji)
- 2016年5月13日
- 読了時間: 3分
きっと君は来ない ひとりきりのクリスマス・イブ Silent night, Holy night

言わずと知れた名曲、『クリスマス・イブ』。あなたもきっと一度は耳にしたことがあるでしょう。では、あの甘く優しい歌声の持ち主である山下達郎さんのお姿をご存じですか?


あれ? 何だかイメージと違うな…
あの美しい歌声と彼の見た目にギャップを感じる方は多いのではないでしょうか。これは、私たちが彼の声から見た目を予測しており、その予測と実際の姿が異なるためにずれを感じるのだと考えられます。

確かに人の見た目と声にギャップがあるなあと思うことはあるけど、声から見た目を予測することなんてできるの?
心理学の研究では、この疑問を「顔と声のマッチング課題」で検討しています。
アメリカの心理学研究者Mavicaさんたちは、2枚の顔写真を見せ、短い文章を読み上げた声の音声を聞かせて、声の持ち主だと思う方の写真を選ばせるという実験を行いました。2枚の写真の人物の性別は同じで、どちらか一方が声の持ち主となっていました。下の写真は実際の実験で使用されたものの一例です。

(Mavica & Barenholtz (2013) Fig. 1より引用)
実験に参加した人は男女64ペアのマッチング課題を行いました。その結果、平均正答率は57%となり、人は人物の声からその持ち主の顔を正しく予測することができるということがわかりました。

うーん、声から顔を当てられるってことはわかったけど、正答率が57%ってそんなに高くないんじゃない?
確かに、正しく答えた場合と間違えた場合が半々だった場合である50%と比べて、57%という正答率はあまり高くないと言えるかもしれません。それではここで、実験で使用した写真と音声の64人の人物ごとに正答率を見てみましょう。

(Mavica & Barenholtz (2013) Fig. 3より引用)
上のグラフは、実験で参加者に見せた64人の人物を、グラフの左から正答率の低い順に並べたものです。このグラフの正答率は、64人の人物それぞれが音声に対して正しい顔写真を選択された確率を意味します。つまり、グラフの右側の人物ほど正答されやすく、左側の人物ほど誤答されやすかったということになります。

うわあ、人によって当てられやすさが全然違うね! 見た目と声にギャップがある人はグラフの左側になるのかな?
そうかもしれませんね。この研究では、顔と声の組み合わせの当てやすさが人によってばらついているということが示されました。この組み合わせが当てられにくい人は、受け手にギャップを感じさせる顔と声の持ち主であると言えるでしょう。

じゃあ、「受け手にギャップを感じさせる顔と声の持ち主」は一体どんな顔と声の持ち主なの?
その疑問に対する答えはMavicaさんたちの研究では明らかになっていません。この記事の著者もその疑問の答えが気になったので、実験をして調べてみました。
手前味噌ですが、その結果を簡単にお話ししますと、顔と声のそれぞれから得られる性格特性の印象が異なっている人ほど顔と声の組み合わせを当てられにくいという結果が得られました。例えば、声は甘く優しい印象をしているのに、顔があまりさえない印象だと、顔と声の組み合わせを同一人物のものだと判断するのが難しく、顔と声にギャップを感じるというわけです。
「もっと詳しく知りたい!」という方は、下記リンク先の資料(PDFファイル)をご覧ください。 http://yukamitsufuji.net/wp2/archives/120
引用文献:Mavica, L. W., & Barenholtz, E. (2013). Matching voice and face identity from static images. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 39(2), 307-312.
引用画像: http://www.tatsuro.co.jp/disco/single_01.html http://www.tatsuro.co.jp/news/ http://www.irasutoya.com/2014/03/6_6901.html http://www.irasutoya.com/2013/06/blog-post_8323.html http://www.irasutoya.com/2013/04/blog-post_5368.html
(光藤優花;小川洋和ゼミM2)
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