あなたにおススメの勉強法!~記憶と分散と時々睡眠~
- 中野麻里花(Marika Nakano)
- 2016年5月13日
- 読了時間: 4分

効率の良い勉強の方法とは?
一夜漬けと毎日コツコツ勉強するのとでは、どちらが効率よく勉強できるだろうか?答えはもちろん、後者である。確かに、一夜漬けは翌日がテストの時は何とかなるかもしれない。しかし、そうして覚えたことはすぐ忘れてしまい、次のテストの時にまた覚えなおすハメになる。どうして毎日コツコツ勉強した方が良いのか? また、どのような勉強方法が良いのか? このことについて、〝分散効果”(Spacing effect)を用いた実験を通してご説明しよう!!
詰め込むよりも分けた方が良い?
分散効果とは、連続して学習を繰り返すよりも、1回目に学習した後に間隔を空けて (分散して) 2回目の学習 (再学習) をする方が、記憶に残りやすいことである。再学習までに間隔を空けて (分散して) 学習する方法を分散学習という。(分散効果を説明する理論が2つ論文で紹介されているが、詳しくは論文を参照して頂きたい)
これまでの研究で、分散学習での分散が短い時 (~15分) よりも長い時 (1日以上) の方が、長期的に記憶に残りやすいことが示されている。ここで、睡眠の効果が疑問視される。すなわち、分散が長い時には必然的に睡眠をとることになる。しかし、分散学習において睡眠がどのような役割を持っているかは明らかでない。そこで、分散学習に有効なのが間隔を空けることなのか、睡眠をとることなのかを明らかにするために以下の実験を行った。
分散効果に必要なのは、分散の長さか!?それとも睡眠か!?
実験参加者の課題の内容は、スワヒリ語と英単語の単語対を覚える (学習する) ことであった。そして、覚えた単語対を実験者が指定した間隔を空けてから、再度同じ単語対を学習 (再学習) した。最後に、再学習してから10日後に、どのくらい単語対を覚えているかの記憶テストを行なった。

Figure 1. 実験群ごとの課題の流れ. (学…学習、再…再学習)
実験参加者は4つの群のいずれかに分けられた。Figure 1に各群の課題の流れを示した。1つ目は、単語対を学習した後すぐに再学習する直後再学習の群、2つ目は朝に学習して12時間後の夜に再学習する、睡眠なしの12時間後再学習の群、3つ目は夜に学習して12時間後の朝に再学習をする、睡眠ありの12時間後再学習の群、そして4つ目は24時間後に再学習を行なう群であった。12時間後に再学習をする群を2つ設けたのは、睡眠の有無によって記憶テストの成績に違いが見られるかどうかを確かめるためであった。
睡眠あり vs 睡眠なし , 分散が長い vs分散が短い
Figure 2のグラフに、記憶テストの結果を実験群ごとに示した (エラーバーは標準誤差を示している)。

Figure 2. 実験群ごとの記憶テストの正答率 (論文から改訂).
実験の結果、24時間後に再学習した群と睡眠ありの12時間後再学習の群は直後再学習の群よりも、正答率が高かった。また、24時間後に再学習した群は、睡眠なしの12時間後再学習の群よりも正答率が高かった。しかし、それ以外の群の正答率の間に違いは見られなかった。
分散と睡眠の大切さ ~長期的な目で見て~
実験の結果から、分散が長いほど、かつ睡眠をとった方が記憶に残りやすいことが分かった。12時間後に再学習する2群の記憶成績の間に違いが見られなかったのは、睡眠が有効的に働くためには数日という分散が必要であったためかもしれないと考察されている。すなわち、実験では分散が12時間という1日未満の時間であったため、睡眠の効果が見られなかったということだ。(あるいは、睡眠なしの12時間後再学習群の人が昼寝をしていたのかもしれない…)
つまり、一夜漬けのように連続して繰り返し学習するよりも、毎日コツコツ勉強し、睡眠を間に挟む方がテストでは良い成績が取れる可能性が高まると言えるだろう。徹夜でテストに向かい、身体も成績もボロボロになりたくなければ、やはり日々の勉強と睡眠を大事にする方が良いのだ。 たとえ、たとえそれがどんなに面倒でも…
引用文献
Bell, M. C., Kawadri, N., Simone, P. M., & Wiseheart, M. (2014). Long-term memory, sleep, and the spacing effect. Memory, 22, 276-283.
(中野麻里花;浮田潤ゼミM1)
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